日本人の入浴形態は全身浴で、毎日湯に浸かることが習慣になっています。入浴は身体を清潔にし、温め、リラックスさせ、加えて睡眠を円滑にする効果があります。しかし反面、冬季には高温の入浴で多くの高齢者が死亡事故を起こすという事実もあります。
こうした背景の下、本学リハビリテーション学科の美和千尋教授らは入浴中の高齢者の体温調節機能と主観的心理変化を若年者と比較し、加齢と入浴との関係について研究を行いました。その結果、入浴時の湯温による体温上昇に伴う調節機能である皮膚血管の拡張および発汗反応が、高齢者では若年者より遅延していること、また、入浴時の主観的心理的反応である温熱感や不快感について、若年者は高温の湯に入浴すると熱いと感じ、不快感が増加するのに対して、高齢者ではその感覚の変化が小さいこと明らかにしました。若年者と高齢者の入浴時における温度に対する感受性の違いには、加齢に伴う身体構造の変化や体温調節機能の減弱性などが関係するものと考えられています。
本研究成果は、高齢者では皮膚の温度感受性が低下しており、高温の湯に長時間浸かるようになるため、これが高齢者の入浴事故につながる可能性を示したものであり、高齢者の入浴は十分注意する必要があることを示唆しています。
Chihiro MIWA, Hiroya SHIMASAKI, Masayasu MIZUTANI, Yasunori MORI, Kazunori MAEDA, Akira DEGUCHI: Effect of aging on thermoregulatory and subjective responses during a 15-minute bath at 41 ℃. Journal of the Human-Environment System (2020); 23(1): 45-53.
-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏治-