本学教員による「加齢に伴う神経機能の低下と脳内プロテアソームの動態変化に関する研究成果」が、WILEY社のGenes to Cells誌に掲載されました

2024年04月30日

細胞内のタンパク質分解酵素複合体であるプロテアソームは、脳?神経系においては神経細胞やグリア細胞などで生じる異常なタンパク質の分解に関与しており、細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしています。プロテアソームの機能は加齢に伴い神経系を含む多くの組織で低下し、この低下は加齢による認知機能や免疫能の低下に関係する可能性が考えられています。

この度、本学医療栄養学科の長太のどか助教らは、月齢(1、6、12、18、24)のマウスを用いて、加齢に伴う脳内プロテアソームの機能関連因子の変化を解析しました。その結果、脳粗抽出液中のプロテアソームのペプチダーゼ活性は加齢とともに有意に減少し、ユビキチン化タンパク質は加齢とともに蓄積されることが分かりました。さらに、プロテアソームを形成する各サブユニットの発現には加齢に伴う減少傾向が認められました。一方、通常、プロテアソームの分子集合に関与するタンパク質Ump1はプロテアソームの形成後にプロテアソームによって分解されますが、このUmp1は加齢とともに増加していました。そこで、各々の月齢におけるプロテアソームのサイズを分子篩クロマトグラフィーで解析したところ、プロテアソームの形成は加齢とともに減少していることを認めました。さらに、20Sプロテアソームの活性化を促進する因子であるPA700とPA28が結合したPA28-20S-PA700ハイブリッド型複合体が加齢とともに増加していることが分かりました。

以上の研究成果から、加齢に伴う認知機能の低下の原因の一つは、神経細胞内に蓄積した異常タンパク質を除去するプロテアソームの形成が加齢とともに低下するためであり、この原因には細胞内での陳旧プロテアソームの代謝機能の低下が関係することが示唆されました。

本研究には、本学医療栄養学科の長太のどか助教、棚橋伸行教授、東京大学の村田茂穂教授、東京都医学総合研究所の田中啓二理事長が参画し、研究成果はWILEY社のGenes to Cells誌に掲載されました。

Nodoka Nago, Shigeo Murata, Keiji Tanaka, Nobuyuki Tanahashi. Changes in brain proteasome dynamics associated with aging. Genes cells. (2024) Mar 25.:https://doi.org/10.1111/gtc.13113

-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏治-