日本人の3?4人に1人が慢性頭痛や片頭痛に悩まされています。日常生活に支障が出てくる場合もあります。頭痛の原因は、精神的ストレスや筋肉の凝り、眼精疲労など様々な要因があると考えられます。
【頭痛の種類】
■ 緊張型頭痛
頭から首や肩にかけての筋肉が緊張し、血流が悪くなると疲労物質が筋肉に溜まり、神経を刺激して痛みが起こります。
■ 片頭痛
頭の片側のこめかみを中心に、ズキズキと脈を打つような痛みが特徴です。ひどくなると頭全体に痛みが広がる場合もあります。
主に緊張した頭や頸や肩のまわりの筋肉をほぐし、筋肉の緊張を取り除く治療を行い、頭への血行を正常にします。
またこの治療に加えて、脳がリラックスする治療をします。患者さんの状態に合わせ、ツボ(経穴)を選択し、神経の働きを活性化させ血流をよくします。
頭痛は慢性化すると、長期間の薬の服用で薬が効かなくなります。そのような患者さんでも鍼灸治療は効果的で即効性がある場合があります。
頭痛のなかには、放っておくと生命の危険に関わる病気が潜んでいる場合があります。心配な場合は医療機関を受診することをお勧めしています。
肩こりは、肩の周辺の筋肉が緊張?疲労することで血行が悪くなって起こります。
また、身体全体の機能障害が肩こりという苦痛を引き起こしていると考えられます。
【肩こりの種類】
■ 原発性肩こり
基礎疾患がない(大きな器質的疾患がない)
■ 症候性肩こり
明確な基礎疾患がある肩こり(病気が原因の肩こり)
一般的に「肩こり」の場合は、まずは筋肉の凝りをほぐし、鍼で刺激をすることで血流が良くなり?凝りを和らげます。
鍼灸治療は、刺激を加えた局所の血流を増加させることができます。また自律神経失調や運動神経の過剰な興奮を改善して?全体的な血流改善や筋の弛緩を促すことにより、肩こりの治療が期待できます。
東洋医学では、全身的な機能調整(臓腑の調整)と症状部位の循環を改善させるための治療(経脈の巡りを良くする)を行っています。そのため、肩や頸とは離れた手足や腹部などにも治療を行います。機能調整のために、東洋医学では証と呼ばれる病態分類に基づき治療を行っています。
※明らかな原因疾患があれば、まずは専門医療機関での治療が必要です。
肩こりの原因や症状、それに応じた治療が一人ひとり異なるように、治療効果にも個人差があります。 特に肩こりは、様々な要因が重なっていたり、症状が長引くことで筋肉の疲労が激しくなる場合も多く、短期間で症状を改善することが難しいこともあります。繰り返し治療を行うことで少しずつ症状が改善され治療効果が実感できます。また症状が改善された後も、1ヶ月に1~2回程のペースで定期的に治療を受けることをお勧めしています。
運動時あるいは安静時に腰部に痛みを感じる、それが腰痛です。実際に病気やけが等の自覚症状を聞いてみると、男性で1位、女性は2位が腰痛となっています(平成28年度国民生活基礎調査)。二足で歩行する人間は、普段から上半身の体重が腰にかかり、前かがみなどの不自然な姿勢でより腰に負担がかかることから腰痛が多いと言われています。
腰痛には大きく分けて「非特異的腰痛」と「特異的腰痛」があり、腰痛で受診する患者さんの85%が非特異的腰痛と言われています(正確な診断を下されてないものを含む)。
【腰痛の種類】
■ 非特異的腰痛
大きな基礎疾患がないもの
■ 特異的腰痛
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの基礎疾患があるもの
【原因】
静力学要因 | 姿勢不良、筋肉疲労 など |
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退行変性 | 椎間板ヘルニア、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症 など |
骨代謝異常 | 骨粗しょう症、骨軟化症 など |
外傷 | 腰椎圧迫骨折、打撲、腰椎分離すべり症 など |
炎症 | 筋炎、筋膜炎、関節リウマチ など |
腫瘍 | 骨肉腫、血管腫 など |
【腰痛になりやすい傾向】
?同じ姿勢が多く疲れやすい(長時間の車の運転、デスクワークまたは立ち仕事が多いなど)
?腰に負担の多い労働をする
?ヒールの高い靴を履くことが多く、膝に負担がかかる
?運動不足だと感じることが多い
非特異的腰痛に対しては、鍼や灸で腰部を刺激し、筋肉の緊張をほぐし、血流をよくすることで、痛みを取り除きます。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などに対しては、腰部のほかに足のしびれや痛みに対しても鍼や灸で治療を行います。
これらに、東洋医学的な機能調整(臓腑の調整)の治療を加えることで、治療効果はさらに高まります。
腰痛に対する鍼灸治療では、これまでの研究から「痛み抑制、筋血流の改善、神経血流の改善、筋緊張の緩和」などができることが分かっています。これらが複合的に効果を発揮することで腰痛が治ります。また本センターの研究では、非特異的腰痛の患者さん(約20名)に治療をし、1回の治療で腰痛VAS※の数値が1週間で62から42に減少したという結果が出ました。1回の治療で腰痛が軽減されますが、継続的な治療はさらに効果的です。
(※VAS:まったく痛くない場合を0、想像できる最大の痛みを100として痛みを評価する方法)
鍼灸治療は腰痛に対して効果の期待できる治療法です。腰痛でお悩みの方はぜひご相談ください。
耳なりとは、「外界からの音刺激なくして自覚的に感じられるいっさいの音感覚(雑音)」とされています。 耳なりの原因はいまだはっきりしていませんが、神経説や伝音説などが考えられています。
【耳なりの種類】
■ 神経説
聴覚伝導路に関連する神経の興奮性が何らかの原因により高まり、過敏になって音が聞こえるという説。内耳のみが耳なりの発生原因として考えられるわけではなく、大脳皮質の関与も考えられています。
■ 伝音説
音を伝える耳小骨筋の痙攀などで筋の痙攀が耳なりとして聞こえたり、内耳付近の血流雑音を耳鳴りとして、あるいは耳垢が鼓膜に接しているために聞こえるなどの説。耳の病気から耳なりが起きることや、全身性疾患に伴い耳なりが起きることもあります。
項目 | 疾 患 |
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耳疾患にともなう耳なり | 耳垢栓塞、急性中耳炎、慢性中耳炎、耳管狭窄、メニエール病、突発性難聴、内耳性難聴、 聴神経腫瘍、聴神経炎、無難聴性耳鳴など |
全身性疾患にともなう耳なり | 代謝障害、栄養障害(ビタミン欠乏など)、アレルギー、薬物中毒、高血圧、 ホルモン失調(甲状腺機能亢進など)、心因性(神経症、仮面うつ病など) |
耳垢栓塞の耳なりは耳垢を取り除くことで、中耳炎の耳なりは炎症がおさまれば耳なりは治りますので、まずは耳鼻科専門医の受診を勧めます。実際に、鍼灸治療に来院される患者さんのほとんどが医療機関の検査で病名が明確になっています。
自覚的耳なりの患者21例(男性14例、女性7例)に、患側の耳周囲の経穴(耳門?翳風?下関?風池)に、鍼を浅く15分間刺しておきました。鍼治療の前後でラウドネス?バランス検査をしたところ、17例(81%)でラウドネスが減少、つまり耳なりの音の大きさが減少しました。増悪例がないことやほとんど副作用がないことから、安心して治療を受けていただけます。
首や肩のコリを取り除くことで、耳鳴りが軽減することが多くあります。そのため、耳周囲の治療に加えて、首や肩にも治療を行います。繰り返し治療を行うことで、症状の改善が実感できます。