本学教員による結腸がん誘発マウスの血管新生に対する高用量ビタミンCの効果に関する研究成果が、日本薬学会の欧文誌Biol Pharm Bull に掲載されました。

2022年02月15日

がん細胞は増殖のために酸素と栄養の供給路として腫瘍内における血管新生を必要とします。低酸素の環境下では低酸素誘導因子(HIF-1α)の発現増加によって、血管新生に必要な血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの産生が促進されます。血管新生には活性酸素種(ROS)も関与しており、細胞内ROSの産生増加は がん細胞のアポトーシスを促進するp53の産生を促進し、さらに、p53による腫瘍の増殖抑制にはエンドスタチン(XVIII型コラーゲンのC末端ペプチド断片)が関与することが知られています。

ビタミンC(VC)は、高濃度で抗腫瘍効果を示すことが報告されており、p53関連のアポトーシスに関与することが示唆されています。しかし、高容量VCがエンドスタチンの産生に及ぼす効果は明らかではありませんでした。

今回、著者らは、Colon 26結腸がん細胞株の異種移植片を有するマウスにおける血管内皮細胞の増殖に対する高用量VCの経口投与の影響について検討をしました。その結果、高用量VC投与は腫瘍容積を減少させ、腫瘍組織におけるp53およびエンドスタチンの発現量を高めることが分かりました。さらに高用量VC投与は、HIF-1αとROSの発現量を低下させました。以上の結果から、高用量VCの経口投与により血管新生が抑制され、腫瘍の増殖が抑制されることが示唆されました。

本研究は、臨床における疑問を基礎研究で解決するトランスレイショナルリサーチとして、薬学研究科の社会人大学院生である中西賢太郎氏が取り組んだ内容であり、大井一弥教授、平本恵一助教らの指導のもとに行われた成果です。

掲載論文:
Nakanishi K, Hiramoto K, Ooi K. High-Dose Vitamin C Exerts Its Anti-cancer Effects in a Xenograft Model of Colon Cancer by Suppressing Angiogenesis. Biol Pharm Bull. 2021;44(6):884-887. doi: 10.1248/bpb.b21-00089.

-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏治-