本学教員による論文「フロー化学により可能となった5-ジエチルボリル-2,3’-ビピリジンの合成とその自己集合ダイナミックス」が、Wiely-VCH社のChemistry-A European Journal誌に掲載されました

2023年02月13日

有機ホウ素化合物は、鈴木 章博士(北海道大学名誉教授、2010年ノーベル化学賞受賞者)らが開発したクロスカップリング反応を用いた医薬品や農薬などの合成に広く用いられています。最近では、液晶や有機発光ダイオードなどの機能材料や超分子自己集合にも用いられ、脚光を浴びています。

本学医療栄養学科の若林成知教授らは、ホウ素の特性を活かした分子設計に基づき新規な自己集合体の開発研究をしており、これまでに超分子化学や物理有機化学の分野において様々な発見をしてきました。今回、若林教授らは、既報(Wakabayashi S, et al. Chem. Asian J. 2019 & J. Org. Chem. 1999)のボリルフェニルピリジン体における両芳香環間の2面角に着目し、新たに設計したボリルビピリジン体のフローマイクロ合成を行い、その自己集合挙動を解析しました。その結果、DFT(density functional theory)計算(電子系のエネルギーなどの物理量を電子密度から計算する方法)による推定通り、2面角のわずかな違い(15°)が、溶液中での環状多量体間の平衡に影響を及ぼし、平面性に起因した結晶構造をとることを明らかにしました。さらに、環状多量体間の動的平衡をフローNMRにより解析し、1分以内に起こる平衡移動を世界で初めて実証しました。

本研究には若林教授に加え、北海道大学理学研究院の永木愛一郎教授、京都大学化学研究所の大木靖弘教授らが参画し、研究成果は化学分野の国際雑誌Chemistry-A European Journalに掲載されました。

Wakabayashi S, Takumi M, Kamio S, Wakioka M, Ohki Y, Nagaki A. Flow-Chemistry-Enabled Synthesis of 5-Diethylboryl-2,3’-bipyridine and Its Self-Assembly Dynamics. Chem. Eur. J. 2023, 29, e202202882. DOI: 10.1002/chem.202202882

-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏治-