薬学研究科教員、大学院生によるアルツハイマー病に関する研究成果が、MDPI社の国際学術雑誌Nutrientsに掲載されました。

2020年09月29日

超高齢社会の進行にともない、アルツハイマー病(Alzheimer disease: AD)患者の増加が続いています。ADの発症機序には、アミロイドβ蛋白の凝集による老人斑の形成、タウ蛋白のリン酸化による神経原線維変化などが知られていますが、現時点では両仮説ともに神経組織の障害機序は解明されていません。また、糖尿病はADの危険因子の一つとして知られていますが、その神経障害機序は明らかではありません。

本学薬学科の郡山准教授たちは、これまでに血糖の中間代謝物グリセルアルデヒド(GA)由来の終末糖化産物 (Toxic-AGEs: TAGEs) が中枢神経細胞を障害することを報告してきましたが、その標的分子は明らかではありませんでした。

本研究において郡山准教授たちは、GAの標的分子の一つが、神経軸索伸長に関わる「β-チューブリン」であること、また、GAによりTAGE化修飾されたβ-チューブリンが異常凝集を起こし、神経軸索の伸長を抑制することを見出しました。この結果は、GAがAD特有にみられる神経原線維変化を引き起こし、糖尿病がADの危険因子になることを分子レベルで証明したものとして高く評価されます。

本研究には、薬学研究科/薬学科 郡山恵樹准教授、薬学科 古川絢子助教、大学院薬学研究科2年生の那須隆斗さんなどが参画しました。

掲載論文:
Nasu R, Furukawa A, Suzuki K, et al., The Effect of glyceraldehyde-derived advanced glycation end-products on β-tubulin-inhibited neurite outgrowth in SH-SY5Y human neuroblastoma cells. Nutrients 2020, 12(10), 2958; https://doi.org/10.3390/nu12102958

-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏冶-