本学教員による、腸内細菌の母子間伝搬と脳機能発達における役割に関する研究成果が、オランダElsevier社のNeuroscience Research誌に掲載されました。

2021年06月29日

ヒトの腸にはおよそ1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息していますが、多様な腸内細菌で構成される微生物群集は腸内細菌叢(そう)と呼ばれています。近年、腸内細菌叢がヒトの心身の発達や健康維持、さらに病態形成に密接に関わることが明らかになってきました。

腸内細菌叢を構成する細菌の多くは、出産時に胎児が産道を通過する時より母親をはじめとする周囲の環境から子の腸管腔内に取り込まれると考えられていることから、子の腸内細菌叢の主な源は母親の腸内細菌叢であると言われています。したがって、何らかの環境要因によって母体の腸内細菌叢が乱れたり、母子間の細菌伝搬が阻害されたりすると、子の腸内細菌叢の定着に影響を与え、子の心身の発育に影響を及ぼす可能性があります。

この度、栃谷史郎准教授(保健衛生学部 放射線技術科学科)は、子の脳の発達における母体の腸内細菌叢のはたらきに関する自身のこれまでの研究成果を中心に、胎児?新生児期の腸内細菌の定着機構や母子間の腸内細菌伝搬に影響を及ぼす環境要因などの最新の研究成果を総括的に解説した論文をElsevier社のNeuroscience Research誌に総説として発表しました。

本論文は、これまでの腸内細菌叢に関する膨大な知識を体系的にまとめ、腸内細菌叢の母子間伝搬と脳機能の発達における役割を明確に示すことにより、この分野の研究の方向性を提示したものであり、今後の研究の一層の発展が期待されます。

掲載論文
Shiro Tochitani*
Vertical transmission of gut microbiota: Points of action of environmental factors influencing brain development. (2021) Neuroscience Research 168, 83-94.
https://doi.org/10.1016/j.neures.2020.11.006

-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏治-