薬学科教員などによるエゾウコギ含有成分に関する研究成果が、Records of Natural Products誌およびScientific Reports誌に掲載されました。

2020年10月28日

「エゾウコギ」は高麗人参と同じウコギ科の植物で、中国明代の「本草綱目」という書物には、“一握りのエゾウコギは馬車いっぱいの金銀財宝に勝る”と記されています。

本学薬学科の藤川隆彦教授らは、これまでにエゾウコギがもつ滋養強壮作用(抗ストレス?疲労回復など免疫力を高める作用など)の薬理作用を明らかにするため、ラットの性格を不安高感受性と不安低感受性に判別する独自の試験装置を開発し、この試験で得られた不安高感受性ラットを用いて、エゾウコギ抽出物には医薬品の抗不安薬よりも優れた抗不安効果があることを報告してきました(Miyazaki. S.et al, Molecules 2019)。

今回、藤川教授らはエゾウコギ含有成分について解析し、免疫力を高めるβ-エンドルフィンの分泌を促すといわれるイソフラキシジンとは別の物質のシリンギンが不安高感受性ラットに対して行動薬理学的、自律神経学的に安定した抗不安効果を発揮すること明らかにしました。この成果は2020年9月26日付けでアメリカ生薬学会?アメリカ化学会が発行するRecords of Natural Products誌に受理されました。

この研究には、本学薬学研究科 宮崎翔平大学院生?薬学科 及川弘崇助教?(株)サン クロレラ 竹腰英夫取締役?三重大学 緒方正人副学長?薬学科 藤川隆彦教授、が参画しました。

掲載論文:
Miyazaki. S., Oikawa. H. et al., Novel pharmacological effects of syringin on anxiety behavior and autonomic nervous system activity. Rec. Nat. Prod. 2020 in press: 1-6.
DOI: http://doi.org/10.25135/rnp.200.20.08.1775

さらに藤川教授らは、不安高感受性ラットに対するエゾウコギ含有成分のエレウテロサイドEとクロロゲン酸の効果について解析し、この混合物が行動薬理学的、自律神経学的、分子生物学的に安定した抗不安効果を発揮することを明らかにしました。この成果は2020年9月30日付けのScientific Reports誌(Nature などの自然科学分野の雑誌を発行するネイチャー?リサーチ社刊行)に受理されました。

この研究には、本学薬学研究科 宮崎翔平大学院生?薬学科 藤田快男助教?同 及川弘崇助教?(株)サン クロレラ 竹腰英夫取締役?筑波大学 征矢英昭教授?三重大学 緒方正人副学長?薬学科 藤川隆彦教授、が参画しました。

掲載論文:
Miyazaki. S., Fujita. Y., Oikawa. H. et al., Combination of syringaresinol-di-O-β-D-glucose and chlorogenic acid shows behavioral pharmacological anxiolytic activity and activation of hippocampal BDNF-TrkB signaling. Sci. Reports 2020; 10(1), 18177.
DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-020-74866-4

-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏冶-