本学教員による「栄養欠乏状態マウスにおけるプロテアソームの発現と機能に関する研究成果」が、ELSEVIER社のThe Journal of Nutritional Biochemistry誌に掲載されました。

2022年04月21日

生体内におけるタンパク質分解は新陳代謝の中心的反応であり、真核生物の細胞内には高度に保存された二つのタンパク質分解系であるユビキチン?プロテアソーム系とオートファジー?リソソーム系が存在します。ユビキチン?プロテアソームによるタンパク質分解系は、真核生物において細胞内の細胞周期、免疫応答、シグナル伝達、飢餓応答をはじめとする様々な生体反応に重要であり、ユビキチン化されたタンパク質がATP依存性にプロテアソーム(タンパク質分解酵素の集合体)によって分解されるシステムです。これまでは、絶食や食事制限下における筋肉組織でのユビキチン?プロテアソーム系の研究が行われており、他の臓器での研究はほとんど行われていませんでした。

この度、医療栄養学科の棚橋伸行教授らは、マウスを用いて短時間の飢餓状態下での脳と肝臓におけるプロテアソーム構成分子の発現と機能について解析しました。その結果、肝臓と脳では、プロテアソームを形成するサブユニットの発現量には変化はみられませんでしたが、プロテアソームの活性が異なることが明らかになりました。興味深いことに、通常、プロテアソームの分子集合に関与するタンパク質であるUmp1はプロテアソームを形成した後に、プロテアソームによって分解されますが、絶食状態下では、プロテアソーム活性の減少に伴いUmp1が蓄積されることが分かりました。
以上の結果から、1)Ump1の機能は栄養状態によって制御されること、2)プロテアソームの形成メカニズムは臓器によって異なる可能性があることが示唆されました。

本研究には、本学の医療栄養学科の棚橋伸行教授、東京大学の村田茂穂教授、東京都医学総合研究所の田中啓二理事長が参画し、研究成果はELSEVIER社の学術雑誌The Journal of Nutritional Biochemistry誌に掲載されました。

Nobuyuki Tanahashi, Moeko Komiyama, Mina Tanaka, Yuta Yokobori, Shigeo Murata , Keiji Tanaka. The effect of nutrient deprivation on proteasome activity in 4-week-old mice and 24-week-old mice. J.Nutr.Biochem. (2022): https://doi.org/10.1016/j.jnutbio.2022.108993

副学長(大学院?研究担当)鈴木宏治