11月11日(金)に第14回薬学セミナーが開催されました。今回は本学薬学部医化学研究室の佐藤英介教授と分子生物学研究室の森田明広准教授のお二方に講演していただきました。
佐藤教授には「死んでも身体を守る!:好中球細胞外トラップとは」という演題名で、本学薬学部に着任以降に行ってきた好中球細胞によるNETosisの研究成果を発表していただきました。NETosisとは、apoptosisやnecrosisといった従来から知られている細胞死とは異なる細胞死であり、自身のDNAを網状に放出し、ターゲットとなる細菌などを捕縛しながら能動的に細胞死を起こす現象です。まさに「死んでも身体を守る!」を体現した現象について、本学の学生と共に明らかにされてきた数々の知見を紹介していただきました。また、併せて、研究に向き合う姿や教育に対する熱意についてお伝えいただきました。
森田准教授には「生薬成分の作用機序のiPS細胞を用いた解明」という演題名で発表していただきました。森田先生は、iPS細胞-神経幹細胞-神経細胞/アストログリア細胞の一連の分化様式を用いて、生薬成分由来のバイカリン、ノビレチン、グリチルリチンの影響を解析されています。その中で、Hes1タンパク質の転写後抑制を通じて、バイカリンが神経細胞への分化選択性を向上させることを発見されました。一方、肝細胞への分化に対するグリチルリチンの影響も解析され、グリチルリチンがWntシグナルの活性化を介してNotchシグナルの抑制制御を行い、肝芽細胞から肝細胞への分化を促進することを明らかにされました。森田先生は、iPS細胞から分化する胎生期神経幹細胞とは異なる成体期神経幹細胞の安定的な樹立を目指して、鋭意研究活動を継続中とのことでした。
今回の両先生の講演では、先端的であり、そして大変ユニークな内容を勉強させていただきました。お忙しい中、貴重なお時間を割いてご講演いただいたことに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。今後ともますますのご活躍を祈念しております。
講演要旨とスライドの一部を添付しておりますのでご参照いただければ幸甚です。
-薬学部 薬学科 助教 及川弘崇-