本学教員と企業研究員および三重大学教員による、ヒトエグサ?ラムナン硫酸による動脈硬化の抑制効果に関する研究成果がMDPI社のCells誌に掲載されました

2023年11月30日

海藻ヒトエグサ(アオサ海苔)にはラムナン硫酸(RS)と呼ばれる高分子量のラムノース糖鎖に硫酸基が結合した硫酸化多糖が40%程度含まれており、これまでの研究で、RSには血管内皮細胞の炎症抑制作用、抗血栓作用、抗肥満作用、抗ウイルス作用などの効能効果のあることが報告されています。

一方、アポリポプロテインE(ApoE)遺伝子を欠失したApoE-/-マウスに高脂肪食を摂取させると短期間でアテローム(粥状)性動脈硬化が誘発されることから、ApoE-/-マウスは粥状動脈硬化に起因する心筋梗塞や脳梗塞などの循環器系疾患の発症機序の解明や新たな動脈硬化治療薬?予防食品の開発研究に用いられています。

今回、本学薬学科の鈴木宏治教授を中心とする研究チームは、経口投与したRSが高脂肪食を摂取したApoE-/-マウスに起きる粥状動脈硬化を強く抑制することを認め、その分子機序を解析しました。高脂肪食を12週間摂取したApoE-/-マウスでは血中総コレステロールと中性脂肪の増加、大動脈や肝臓の著しい炎症性病変がみられましたが、RS(0.1%)を含む高脂肪食を摂取したApoE-/-マウスではいずれも著しく抑制されていました。動脈硬化関連分子に対する蛍光標識抗体を用いた免疫組織化学的解析により、RS摂取マウスでは粥状動脈硬化の形成につながる血管内皮細胞の炎症と血管透過性亢進の抑制、血管中膜への単球の侵入とマクロファージ蓄積の抑制、平滑筋細胞の増殖の抑制などが認められました。さらに試験管内実験において、RSはマクロファージの遊走を直接的に阻害しました。これらの結果から、RSは動脈硬化を予防する新しい機能性食品として有用であることが示唆されました。

本研究は、本学と江南化工株式会社(四日市市)及び同社と三重大学の産学共同研究として実施され、研究成果はMDPI社のCells誌の電子版(11月20日付け)に掲載されました。

掲載論文:Terasawa, M.; Zang, L.; Hiramoto, K.; Shimada, Y.; Mitsunaka, M.; Uchida, R.; Nishiura, K.; Matsuda, K.; Nishimura, N.; Suzuki, K. Oral Administration of Rhamnan Sulfate from Monostroma nitidum Suppresses Atherosclerosis in ApoE-Deficient Mice Fed a High-Fat Diet. Cells 2023, 12, 2666. https://doi.org/10.3390/cells12222666

-副学長(大学院?研究担当)鈴木 宏治-