薬学部の教員が責任編集者である書籍「ケースで学ぶ老年薬学」(日本老年薬学会 監修:日経ドラッグインフォメーション発行)が発刊されました

2024年01月26日

日本は超高齢社会の真只中にあり、高齢者医療の基盤となる老年医学や老年薬学に関する知識の普及は極めて重要です。高齢者医療にはエビデンスが十分でなく、マルチモビリティ(多疾患併存状態)、ポリファーマシー(多剤併用)などの多くの問題があります。すなわち高齢者は複数の疾患を抱えていることが多いため、複数の医療機関や診療科を受診し、各診療科で数種類の薬を処方されるため多剤併用に陥りがちです。そのため、高齢者の病態の特殊性や併存症から心身の機能や生活環境に至るまで多彩な医療の提供が必要になります。近年、高齢者に対する医療では、患者の状態や変化が若年者とは異なるため、死亡率の低下よりもQOLの改善や身体機能の回復が重要視されるようになってきています。

「老年薬学」は、高齢者特有の薬物療法や加齢変化による薬物動態などを研究する学術領域であり、老年医学と密接に関係しています。日本では、老年医学や老年看護学の歴史は古くからありますが、老年薬学の歴史は浅く、いまだ十分に普及していません。日本老年薬学会は、日本の老年薬学を発展させる目的で2016年に創設され、2023年には「日本老年学会」に8番目に加盟した学会であり、日本老年医学会と協力して我が国の老年学の一翼を担っており、これからの発展が期待されています。本学の大井一弥教授(薬学部長)は現在、日本老年薬学会の副代表理事として貢献されています。

こうしたなかで、この度、大井一弥教授を責任編集者とした書籍「ケースで学ぶ老年薬学」が日本老年薬学会の監修のもとに日経ドラッグインフォメーションから発刊されました。本書は、名称の通り、症例?事例を具体的にイメージしながら老年薬学を学んでいただく構成になっており、これから老年薬学を学ぶ学生から薬剤師、現場の医療?看護?介護専門職、さらに学生に老年薬学を教える教員まで幅広く活用いただける内容になっています。是非、ご一読ください。

-副学長(大学院?研究担当)鈴木 宏治-