本学大学院生による「高齢者における筋肉量、乾燥皮膚、腸内細菌叢に対する亜鉛の効果」に関する研究成果が日本薬学会のBPB Reports誌に掲載されました

2024年01月22日

亜鉛は私たちの身体を作る重要な栄養素の一つであり、亜鉛が不足すると、味覚異常、創傷治癒遅延、免疫異常などの様々な症状が現れます。我が国の調査で、高齢者の4人に1人が亜鉛不足であると報告されており、日常生活で亜鉛を適切に摂取することは健康を維持するために非常に重要であると考えられます。

こうした背景のもと、本研究では高齢者の筋肉量、乾燥皮膚、腸内細菌叢に及ぼす亜鉛の効果を明らかにするため、特別養護老人ホームの入居者に普段の食事に加えた亜鉛サプリメント(1日当たり10mg)の影響を分析しました。その結果、亜鉛サプリメントを摂取したグループでは、高齢者の筋肉量が維持され、皮膚の水分量が増加することが分かりました。また、亜鉛サプリメントを摂取したグループでは腸内細菌叢のリケネラ科*に分類される腸内細菌の割合が高くなっており、この細菌の割合の増加と下腿周囲長(筋肉量の指標)の増加には正相関する傾向が認められました。

筋力を維持することや乾燥皮膚による皮膚トラブルを避けることは高齢者の健康維持に非常に重要であり、本研究により亜鉛を適切に摂取することは高齢者の筋肉量維持や乾燥皮膚の改善に有益であることが示唆されました。

本研究には、大学院薬学研究科?中川直也 院生、薬学研究科?榎屋友幸 准教授、放射線技術科学科?栃谷史郎 教授、薬学研究科?西田圭吾 教授、大井一弥 教授、薬学科?川西正祐 教授、豊田長康 学長が参画しました。

*リケネラ科:ヒトの腸内に分布している腸内細菌の一種。筋力が低下して日常生活が困難になるサルコペニアの患者では、そうでない人と比較してリケネラ科の腸内細菌の割合が低いという研究報告がある。

Naoya Nakagawa, Tomoyuki Enokiya, Shiro Tochitani, Maki Nakahigashi, Keigo Nishida, Kazuya Ooi, Shosuke Kawanishi, Nagayasu Toyoda. Effects of Zinc Supplementation in the Elderly with Focus on Muscle Mass, Dry Skin, and Gut Microbiota. BPB Reports. 2023, 6(6), 217-225.

-副学長(大学院?研究担当)鈴木 宏治-