本学学生と教員による「漢方薬とDNA分解酵素による好中球細胞外トラップの抑制に基づく紫外線皮膚炎症の予防」に関する研究成果が、MDPI社のInt. J. Mol. Sci.誌に掲載されました

2024年02月09日

白血球の一種である好中球は、体内で細菌などの異物を捕えて殺菌するなど生体防御に重要な細胞です。最近、好中球の殺菌メカニズムが詳細に解析され、好中球は自らの命を絶つと同時にDNA鎖を細胞外に網状に排出して異物を捕えることが分かりました。この現象は好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NET)と呼ばれ、好中球の細胞死に伴う変化としてNETosisと呼ばれています。がん、全身性エリテマトーデス、新型コロナウイルス感染症などでおきる肺炎ではNETosisが亢進することが知られています。本来、NETosisは生体を防御する反応ですが、過度のNETosisは炎症を増悪化するため、NETosisのメカニズムの解明は、炎症性病態の理解に重要です。

紫外線による皮膚傷害には炎症反応が関与しており、なかでもUltraviolet-B(UV-B)による日焼けには好中球が関わることが知られていましたが、NETosisの関与については明らかではありませんでした。そこで本学大学院薬学研究科の佐藤教授らは、UV-B日焼けにおけるNETosisの関与を明らかにするため、UV-B照射マウスを用いて、NETosisを阻害する漢方薬の補中益気湯とNETosisで生成される細胞外DNAを分解する酵素 DNase Iの効果を解析しました。その結果、補中益気湯やDNase Iを投与したマウスでは、UV-B照射による日焼けが抑制されることが解りました。本研究は、紫外線による日焼けに好中球のNETosisが関わっており、NETosisの抑制が日焼けを防ぐことを世界で初めて明らかにしたものであり、今後の日焼け予防薬等の開発につながる成果として期待されます。

本研究には、本学薬学部?稲場一晟 学生、平本恵一 准教授、森田明広 准教授、堤 智斉 准教授、大学院薬学研究科?佐藤英介 教授が参画しました。

Issei Inaba, Keiichi Hiramoto, Yurika Yamate, Akihiro Morita, Tomonari Tsutsumi, Hiroyuki Yasuda and Eisuke F. Sato: Inhibiting Neutrophil Extracellular Traps Protects against Ultraviolet B-Induced Skin Damage: Effects of Hochu-ekki-to and DNase I. Int. J. Mol.Sci. 2024, 25, 1723. https://doi.org/10.3390/ijms25031723

-副学長(大学院?研究担当)鈴木 宏治-