本学薬学科教員による「酢酸による好中球細胞外トラップの促進にはヒストンのアセチル化が関与する」と題する研究成果が、MDPI社のInt. J. Mol. Sci.誌に掲載されました

2024年08月20日

食物繊維を摂取すると消化管内では腸内細菌によって生体に有益な短鎖脂肪酸が大量に作られることが知られています。短鎖脂肪酸には、酢酸、酪酸、プロピオン酸がありますが、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の中で最も多いのが酢酸です。酢酸はさまざまな作用を通じて生体の健康維持に役立っていますが、白血球の免疫機能に及ぼす効果については明らかではありませんでした。一方、近年、白血球の一つの好中球には自らの命を絶つと同時に核内DNAを細胞外に網状に放出して異物を捕える作用、すなわち「好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps, NETs)」作用のあることが明らかになり、この現象は好中球の細胞死に伴う生体防御作用「NETosis」と呼ばれています。

この度、薬学研究科の佐藤英介教授らは、酢酸がNETosisに与える影響を解析し、その結果、酢酸は好中球内に取り込まれてアセチルCoAに変換され、ヒストンのアセチル化とともに、ヒストンのシトルリン化を亢進させて、NETosisを増強させることを明らかにしました。この研究成果は、酢酸のような食品成分によってNETosisが亢進され、自然免疫能が高まる可能性を示したものであり、食品成分によって生体防御機能を高める方法の開発に大きな示唆を与えるものであり、今後の発展が期待されます。

本研究には、薬学部?森田明広 准教授、堤智斉 准教授、中川直也 助手、薬学研究科?佐藤英介 教授が参画しました。

掲載論文:
Hiroyuki Yasuda, Yutaka Takishita, Akihiro Morita, Tomonari Tsutsumi, Naoya Nakagawa and Eisuke F. Sato: Sodium Acetate Enhances Neutrophil Extracellular Trap Formation via Histone Acetylation Pathway in Neutrophil-like HL-60 Cells. Int. J. Mol.Sci. 2024, 25, 8757. https://doi.org/10.3390/ ijms25168757

-副学長(大学院?研究担当)鈴木 宏治-