本学薬学科教員による「化学構造から注射用医薬品のアナフィラキシーショックの発現可能性を予測する人工知能モデルの構築」に関する研究成果が、Springer Nature社のDARU Journal of Pharmaceutical Sciences誌に掲載されました

2024年04月09日

アナフィラキシーショックは医薬品の副作用のなかでも、命にかかわる重篤な副作用の一つです。アナフィラキシーショックの発現リスクは、動物や試験管レベルでの実験では予測できず、特に新薬のアナフィラキシーショックの発現リスクは、臨床試験でヒトに投与するまで検証できず、医薬品の安全性評価において解決すべき大きな課題となっています。

今回、本学薬学科の榎屋友幸 准教授らは、医薬品によるアナフィラキシーショックの発現には薬物の構造などの化学的特徴が関係するとの知見に基づき、PMDA(医薬品医療機器総合機構)が公開している医薬品副作用データベース(JADER)情報を用いて、医薬品の化学的特徴からアナフィラキシーショックの発現リスクを予測する人工知能モデルを構築しました。具体的にはJADERからアナフィラキシーショックの発現確率が高い注射用医薬品と高くない注射用医薬品を抽出し、それぞれの化学的特徴データを収集して人工知能モデルを構築しました。そして、モデル構築に用いなかった医薬品に対して、アナフィラキシーショックの発現リスクを予測した結果、感度:0.75、特異度:0.87と良好な性能を示す人工知能モデルであることが検証できました。

本研究で構築した人工知能モデルは、新薬の化学構造からアナフィラキシーショックの発現リスクを予測可能にする世界初の人工知能モデルであり、新薬開発の初期段階でのリスク評価を効率化し、患者の安全を確保する上で非常に有用なツールになると期待されます。

本研究には薬学科の榎屋友幸 准教授と配属学生の尾崎海斗さんが参画しました。

Tomoyuki Enokiya, Kaito Ozaki. Developing an AI-based prediction model for anaphylactic shock from injection drugs using Japanese real-world data and chemical structure-based analysis, DARU Journal of Pharmaceutical Sciences, 2024. DOI: 10.1007/s40199-024-00511-4

-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏治-