本学と三重大学の教員による「タウリンが老化促進マウス脳内のミクログリアの活性化を抑制する」ことを明らかにした研究成果が、ネイチャー?リサーチ社刊行のScientific Reports誌に掲載されました

2024年04月22日

アルツハイマー病(AD)では、脳内にアミロイドβ(Aβ)およびリン酸化タウが多く蓄積しており、この原因には脳内ミクログリアの過剰な活性化が関係することが示唆されています。一方、タウリンは抗炎症作用を有するアミノ酸の一つであり、神経保護作用のあることが報告されていますが、タウリンがミクログリアの活性化によるADの成因にどのように関与するのか明らかではありませんでした。

本研究では、老化促進マウスP8(SAMP8)の脳に及ぼすタウリンの効果について、タウリン水溶液と蒸留水を長期間投与した群について比較検討しました。その結果、タウリン投与群の脳では対照マウスと比較して、タウリンおよびタウリントランスポーター(TAUT)のレベルが上昇しており、免疫組織化学染色およびウェスタンブロット解析により、タウリン投与群では、活性化ミクログリアの数、海馬と皮質におけるAβおよびリン酸化タウの沈着量が対照群に比較して有意に減少していることが明らかになりました。さらに、タウリン投与群の海馬と皮質では、対照マウスと比較して、ADの病態形成を抑制すると報告されているTREM2遺伝子の発現量が有意に増加していることが判明しました。

以上の研究から、タウリンは脳内のTREM2発現を増強してAβとリン酸化タウの蓄積を抑制するとともに、ミクログリアの過剰な活性化を抑制して神経保護作用を発揮することが示唆されました。AD治療における新しい予防戦略の開発において、タウリンは重要な役割を果たすと考えられます。

本研究は、三重大学の教員と共に、本学看護学科の村田真理子教授、東洋医学研究所の有馬寧教授、川ノ口 潤准教授、鍼灸サイエンス学科の松岡慶弥助手が参画しました。

Ahmed S, Ma N, Kawanokuchi J, Matsuoka K, Oikawa S, Kobayashi H, Hiraku Y, Murata M. Taurine reduces microglia activation in the brain of aged senescence-accelerated mice by increasing the level of TREM2. Sci Rep. 2024 Mar 28;14(1):7427. doi: 10.1038/s41598-024-57973-4.

-副学長(大学院?研究担当)鈴木宏治-